自民党「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」にて、Robust IntelligenceのCo-Founderである大柴が「AIガバナンスのすゝめ 〜日本がAI先進国になるために今求められる戦略〜」というタイトルで講演を行いました。
講演者は伊藤穰一様と弊社Co-Founderの大柴で、資料はこちらにアップロードされています。
本日は、大柴のプレゼンとその際の議論の模様や、そこから見えてくる政策的な課題についてお伝えします。
日本企業に求められる「攻め」のガバナンス
Robust Intelligenceからは、まず冒頭、日本企業のAI活用を妨げているAIリスクについての解説を行いました。
AI活用に大きな恩恵があることはいうまでもないですが、実際にはその活用にはリスクが伴います。RIではそのリスクを「機能・品質面のリスク」「倫理的なリスク」「セキュリティ面のリスク」という3つに分類して捉えています。
たとえば「機能・品質面のリスク」では、住宅価格予測のAIがコロナによる人流の変化をうまく予測できず、大きな損害を出した事例があります。その際は株価が25%下落するという事態につながっており、AIリスクは企業価値にも直結する対策必須の課題となっています。
しかし、日本企業のAIリスク対策はなかなか進んでいません。RIも様々な日本企業と接する中で、「そもそもリスクを恐れて新しいAIを導入できない」「AIを導入しても、リスク管理のコミュニケーションの工数が増して効率が著しく落ちてしまう」といった事態が生じていることがわかってきました。
AIを使った産業の効率化は不可欠なのに、それを実現するためのあるべきガバナンス像がわからない。そんな状況を改善するためには、ガバナンスに対する考え方の根本的な転換が必要です。
そこでRIが提案するのは、「攻めのAIガバナンス」、略して「攻めガバ」。リスク対策というと得てして「やってはいけないこと」「できないこと」を探すことになりがちですが、実際は「何をできるようにするか」「そのためにどのような対策が必要か」という前向きな視点が不可欠です。
政策レベルでも、企業の経営戦略レベルでも、どのようにプロセスを効率化して、ガバナンスによるイノベーション促進を実現していくかが求められており、その際、RIのようなテクノロジーを使ったソリューションはひとつの強力な武器になります。
議場では自民党の先生からも、教育現場でのAI活用について不安視するお声などがありました。
そして、そうした重要な領域にこそ「攻めガバ」が必要である旨をRIからご回答しました。AIに何ができて何ができないのか、どのようなデータを使うのか、など、領域ごとのリスクに備えて適切な対策をとって、前向きに乗り越えていく姿勢が求められます。
今日本に必要な政府・産業界・テック企業の連携
RIのプレゼンの後半では、自民党の提言に向けた議論提起として、政府の役割についてもご意見を述べさせていただきました。
大企業を中心とする産業界と私たちテック企業の協業だけでも一定の成果は上げられているところですが、やはり規制の合理化、ガバナンス戦略の大方針の策定、標準やガイドラインの整備といった役割は政府にしか担うことができません。そうした3社の協業の場を探っていくことが、今後のAI振興にとって有意義だろうと考えています。
議場では、これからスタンダードづくりを行うのは「時すでに遅し」ではないかというご意見もありました。
しかし、現状のようにAI活用に企業が足踏みしているままでは経済にとっても打撃です。変化の速い市場・技術に対しては、「政府がガバナンスの大枠を示し、産業界とRIのようなテック企業が技術・組織的な解決策を詰める」という役割分担でキャッチアップしていくことが重要ではないか。こうしたご意見をRIから述べさせていただきました。
RIからの、政府の皆さま向けのメッセージは下記のスライドに示した通りです。政府と産業界、テック企業が手を取り合って、新しい「攻めガバ」のモデルを考え、実現していきたいと考えています。
Regulationか、Innovationか
議事の最後には、今日本はAIリスクに対して、「Regulation(厳しい規制)で乗り越えるのか、Innovation(技術)で乗り越えるのか」の選択を迫られている、という議論がありました。そして、厳しい規制=守りのガバナンスではなく、技術によってリスクを乗り越える「攻めガバ」を実現するためにこそRobust Intelligenceが存在しています。
AIをめぐっては、様々な不確実性が存在します。たとえば技術の進歩のスピード自体の速さ、技術の特質としての「ブラックボックス」性などがそれに当たるでしょう。しかし私たちは、その不確実性を乗り越えていかなければなりません。
リスクガバナンスに関して一定の指針を政府が示し、実際にリスクを乗り越える方法については、産業界やテック企業も含めた創意工夫の中でベストプラクティスを探していく。そんな役割分担が目指すべき姿ではないでしょうか。
Robust Intelligenceは今後、AIガバナンスのユースケースを増やすとともに、関係者でAIをめぐるあるべきガバナンスモデルを議論するフォーラムづくりなどに取り組み、日本市場の「責任あるAI活用 Responsible AI」の実現に貢献していきます。